保育園に子どもを迎えに行っていた頃、保育士が毎日のように子どもがこしらえたすり傷やたんこぶなどについて懇切丁寧に説明するのに面食らった。 「すべり台を降りた瞬間にお友だちとぶつかって……」、「ボールを追いかけていて転んで……」といった具合。こちらは田舎の野山を駆けずり回って育ったくちだ。子どもなんてケ...
今年もっとも感情を揺さぶられた一冊だ。 なにしろこの本を読んでいる間、いい歳して中学生かよ!というくらい落ち着きがなかった。世の中の不条理に憤って汚い言葉を口にしたかと思えば、声をあげてギャハハと笑い、気がつけば目を真っ赤にして洟をかんでいた。 ノンフィクション好きで著者の名前を知らない人はいない...
コロナ禍で医療や福祉、小売業に従事するエッセンシャルワーカーの存在が脚光を浴びた一方、他者をケアし、社会インフラを支えるために働く彼らの賃金は低く、待遇も改善されないままだ。 新著『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』で、ケアする仕事に就く人々が抱える貧困や差別の問題を取り上げたブレイディみかこさんは...